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2023.09.28

Skydio X10 – Ascend 2023 レポート

概要

Skydio Ascend 2023は北米ドローンメーカー Skydio,Inc. が2023年9月20日、21日に「Brains meets Brawn.」をテーマに開催されたイベントでSkydioの新機体 Skydio X10のお披露目がされました。

これまでもSkydio2, Skydio X2, Skydio 3D Scan, Skydio Dock and Remote Ops.など様々なプロダクト、サービスがこれまでも発表されてきましたがオンライン、リアルの同時開催のイベントは初めてです。

ホテルも本イベント向けに準備されており、専用のバッジスペースなども設けられました。Skydioの法人向けの顧客層が拡大していることを感じさせました。

Skydioはアメリカで法人向けに注力することが発表されており、前日に米国からの参加者に聞いてみるとどのような法人向けのプロダクト、サービスが出てくるかを楽しみにしていたのが印象的でした。

Keynote

イベントはサンフランシスコの港にあるCOWEL THEATERで朝8時から開催され多くの方が来場されていました。

AscendはSkdyio CEO Adam BryのKeynoteから始まります。
始まる前から会場ではカウントダウンが始まり会場では興奮が伝わってきました。

Keynoteからいくつかコンテンツを抜粋します。
なお、Keynoteの全体はYoutubeで確認することが出来ます。ぜひご覧ください。

CEO Adam Presentation

Mission
KeynoteはまずSkydioのミッションについてAdamが話します。
to make the world more productive, creative, and safe with autonomous flight
意訳 : 自律飛行技術で世界をより生産的に、クリエイティブに、安全にしていく

このミッションは2020年に発表されたSkydio 3D ScanのオンラインKeynoteでも語られ、Skydioのミッションは一貫して変わっていません。

*Skydio 3D canオンラインKeynote
Skydio 3D Scan™ Keynote – The New Era of Autonomous Inspection

目指す技術の方向性
Skydio2はマウンテンバイクを追尾、追尾するときに安全に障害物を回避できるドローンとして2019年10月に発表、日本では主に法人ユーザーの点検用途などで使われています。Skydioのドローンはいずれも上下6つのカメラで周囲を認識することが出来、その認識した情報をもとに構造物を自動・自律飛行するSkydio 3D Scanが2021年に発表され日本でも多くのユーザーで使われています。
(最後に日本での活用シーンの動画リンクを紹介しています。ぜひご覧ください)

これらのドローンは1台のドローンを複数のオペレーターで運用する想定でしたが、Skydioは今後1人のオペレーターが複数のドローンを管理する方向で技術開発を進めています。

そのKeyProductが2022年12月に発表されたSkydio Dock and Remote Ops.で、インフラ設備や屋内巡回など屋内外問わず無人で自律飛行し意思決定ツールとしての重要性が高まるとともに、大幅な生産性向上が期待されています。アメリカで特に活用が期待される領域としてPublic Safetyが紹介されました。事故現場の速やかな記録や911コールと連携した対応、人が立ち入れないところへの進入などの想定ユースケースが紹介されています。

Unveiling of Skydio X10
そしてSkydioの新しいプロダクトの紹介です。特徴として、HWとAIが一体で提供されていること、大型機と同等性能を持った中型機であること、米国製であることが紹介されSkydio X10が会場に登場しました。会場ではCEO Adamの手に着陸し、世界で初めてSkydio X10が紹介されることとなります。

会場でAdamの手に着陸する様子

Ref : https://www.skydio.com/x10

*X10の紹介動画はこちらを参照ください。

Skydio X10の概要
紹介動画が会場で流れた後「Cutting Edge Aerospace device packed to an extremely small package (意訳 ; 非常に小型の筐体に詰め込まれた最先端の航空機器)」としてSkydio X10の概要が紹介されました。いくつか抜粋して取り上げます。

Sensor Packages
これまでも1,200万画素の画素数で十分だったかもしれないが、過去3年間の顧客フィードバックを踏まえ大幅にアップグレードしたとしてカメラなどSensor Packagesの紹介がされました。

まず最初の特徴として挙げられたのはセンサー(カメラ)が2種類あることです。これまでのSkydio2+は1種類のカメラのみの選択でした。Skydio X10ではユーザーが用途に応じてセンサーを選択できます。望遠用途に適したVT-300Z、近接に適したVT-300L。いずれもサーマルカメラもついています。さらにサーマルカメラが業務に必要ない顧客向けにV100-Lが今後リリースされることも発表されました。

詳細な仕様はSkydio, IncのX10のページをご覧ください。

Keynoteではカメラの特徴としていくつか紹介されています。

望遠
350feet (約106m)離れた場所を撮影した車両のナンバープレートが鮮明に確認できることを紹介しています。

サーマルカメラ
Thermal CameraはFLIR社のBoson+ 640×512 resolutionを搭載しています。また撮影している対象物の絶対温度もわかるようになり、より詳細な情報を得ることが出来ます。

さらに夜間のSituational Awareness (人物捜索)での活用例をもとに750feet (約228m)離れた人を確認できることも紹介されました。

点検用途
これまでも日本のメジャーユースケースとして点検用途があります。
Crack (ひび割れ) の検知が重要となりますが0.1mmのCrackを検知できるカメラ性能であることが紹介されています。

基本性能と付属品
ハードウェアの基本性能として40秒未満で組み立てし飛行が出来ること、40分の最大飛行時間、45mph’(約時速72km)の飛行速度、そしてIP55に対応した防水性が紹介されています。特にIP55は梅雨時期などでの利用を想定した場合、大きな基本性能のアップグレードです。

また付属品の例として、照明、スピーカー&マイク、RTK GPSセンサー、パラシュート、夜間飛行をサポートするセンサーが紹介されています。いずれも後付けが可能です。

Drone as First Responder
次にSkydioのHead of Public SafetyのFritz Reber氏からFirst Responderのライブデモンストレーションが行われました。本デモンストレーションはサンフランシスコの会場から現場にあるSkydio X10をリアルタイムに操縦しサーマルで通報された人物を特定。警察官が人物を安全な場所に誘導するデモンストレーションであり、その様子は会場で鮮明な映像で確認出来ました。映像が非常に鮮明であり本デモンストレーションの後CEO Adamが「このデモは事前に撮影された映像ではなく、ライブデモです」と補足するほどです。そしてデモンストレーションのネットワークには5Gが使われており、今後の大きな可能性を感じることが出来ました。詳細なデモンストレーションはKeynote動画の38分付近より確認いただけます。

Ref : Skydio Ascend Live Keynote – The Future of Drones and Autonomous Flight

Skydio Autonomy
Skydioの自律飛行技術の根幹であるSkydio Autonomyの進化についてVP of AutonomyのHayk氏より紹介がありました。Skydioの自律飛行チームは会社が設立されたその日(Day 1)からハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズム、ユーザーインターフェースをエンドユーザーが自律飛行を使えるように最適化しています。

搭載チップセット
Skydio X10はNVIDIAのフラッグシップモデルである「NVIDIA Jetson Orin」、「Qualcomm Snapdragon 865」を搭載しています。これにより1秒間に85兆回の処理を行うことが出来るようになり、従来のドローンと比較し10倍以上の処理性能です。

Navigation Camera
Skydio X10もこれまでのSkydioドローンと同様に上下6つのNavigation Cameraを搭載しています。X10から搭載しているNavigation Cameraも変更となり広角200°以上、3,200万画素のカメラが搭載され、これによりより鮮明に、広く周囲を確認できるようになりました。

Onboard Modeling
具体的な活用例としてSkydio 3D Scanで撮影した後の「Onboard Modeling」です。これまでもEdge Model Viewerという機能を使うことでGPSが取得しづらい環境であっても撮影後の画像や画像の網羅性を確認することが出来ました。X10ではさらにエッジ処理を行い撮影後に機体の中で3Dメッシュモデルや2Dオルソ画像を生成、確認することが可能となります。

Ref : Skydio Ascend Live Keynote – The Future of Drones and Autonomous Flight

Sematic Scanning
今後の展開として「Semantic Scanning」というコンセプトも発表されました。これまでもSkydio 3D ScanはGPSが取得しづらい環境であっても網羅的に撮影することが出来ることが特徴でした。このコンセプトは網羅的ではなくユーザーが撮影したいと考えているものをAIが予測しそれだけを撮影するコンセプトで撮影時間の短縮、撮影画像確認の効率化などが期待されます。

Night Sense
最後に紹介されたのがNight Senseです。これまでもSkydioの障害物回避技術は全方位で非常に優れたものでした。ただし上下6つのナビゲーションカメラを基にしているため夜間での利用が困難です。今回X10に搭載されたNight Senseによって夜間の利用も可能となります。

Ref : Skydio Ascend Live Keynote – The Future of Drones and Autonomous Flight

Night Sense デモンストレーション
会場では夜間飛行のリアルデモがCEO Adam氏より行われました。照明が全て落とされた会場でのデモンストレーションでは障害物をよけるだけでなく、疑似的に周辺を認識する様子を確認できます。さらにCEO自ら障害物となりX10がCEOを避けていく様子も確認することが出来ました。

Ref : Skydio Ascend Live Keynote – The Future of Drones and Autonomous Flight

Skydio Night Sense のデモ (CEO Adamを避けるデモ)の様子はこちらを確認ください。

Keynote他トピックス
Keynoteの他トピックスとしてBVLOS (目視外飛行) のサービスの紹介やパートナーエコシステムのSkydio Extendの紹介がされKeynoteは盛況の中終了しました。

Hands-on flying demonstration

午後は場所を移してX10の実機Skydio Dock and Remote Ops.など最新のソリューションに触れる機会を得ることが出来ました。会場ではいたるところでX10が飛行し来場者の注目を集めていました。

その中でも最も盛況だったのが飛行体験エリアです。飛行体験エリアは通信鉄塔、橋梁、配電設備などを疑似的に作った環境で実施され来場者に十分な体験機会を提供していました。新しいズーム機能やサーマルカメラの性能などを実機で試す方が多くいたのが印象的です。

またX10を用いたSkydio 3D Scanのデモも行われました。このデモではKeynoteで紹介されたOnboard modelingも紹介され今後に向けて様々な領域での活用可能性を示しました。

当日の離発着およびX10のSkydio 3D Scanの飛行風景はこちらを参照ください。

最後に

Skydioのドローンは既に日本でも様々な現場で活用されています。今回の発表ではこれまで現場で要望の大きかった機能アップグレードや新しい機能の実装など今後の発展に期待を大きく抱かせる内容となっています。

*Skydio, Inc.へはドコモグループであるNTTドコモ・ベンチャーズを通じて出資しております。
*NTTコミュニケーションズ docomo skyチームには米国外で最初のSkydio Master Instructorが在籍しお客様の運用を支援しております。

参考情報

Skydio Ascend 2023のKeynote動画(英語) – Skydio Ascend Live Keynote – The Future of Drones and Autonomous Flight

Skydio X10の紹介サイト (英語)

CEO Adamによる発表に合わせたブログ (英語) – Skydio X10 and the Next Chapter of Drones in Critical Industries

Skydioの紹介サイト (日本語) – docomo skyチームによる紹介サイト

日本での活用事例動画
Skydio 点検 × 巡回
Skydio | 建設現場におけるドローンポート Skydio Dockを活用した遠隔操縦×自動巡回の実証実験

Skydio Dock™ – 遠隔操縦×自動巡回事例のご紹介

Skydio | 橋梁点検でのドローン活用の実証実験

Skydio | 経年や災害時の変状確認に向けた暗渠内部も含む砂防堰堤の三次元化

自律飛行ドローンSkydioによる遭難者救助を想定した実証実験

Skydio 3D Scan™飛行・撮影事例の紹介 #1

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